東京の片隅にある、
軍需工場の解体現場の片隅で、
カメラを広げている。
そこはジョギングコースのただ中で、
朝五時台というのにたくさんのお年寄りが、
ジョギングをしている。
まるで皆知り合いのように、
誰も彼も、コースをすれ違う度、
こんにちはと声を掛けている。
よそ者の僕にも。
今朝は昭和10年頃にお生まれの淑女に声をかけられる。
工場を眺めながら、
取り壊すのはもったいないという意見と共に、
戦後、私はこの並びの同じような赤煉瓦に
住んでいたという非常に興味深い話を頂く。
完全に平屋だと思っていたが、
天窓のようなスペースには
畳の床があったらしい。
そこに住んでたのだそうな。
いくつか疑問が湧いたが、
整理して一つずつ聞きたいと思って、
それはいつ頃ですか?と質問した。
「そうねー、あの頃は、王子○丁目に住んでたんだけど、、、」
に始まって、そのあと赤煉瓦の伏線のような話があって、
いよいよ関心が引かれてきた話の〆は、
「実は私、皇后様と一緒の誕生日なの。
じゃぁあなたもがんばって。」
で見送られ、彼女は行ってしまった。
直球で聞くよりもう少し話を盛り上げた方がよかったのかな。
なんて聞けば良かったのかよくわからない。
先々週は全く同じ場所、同じ曜日、同じ時間、
建築好きなおじいちゃんに声を掛けられて、
「自転車を買いなさい」
という実践的なアドバイスを頂く。
もうね、
文章だけじゃ伝わらないけど、
説得力が違う。
積み重ねてる。
そのおじいちゃんは、
ローデンシュトックの双眼鏡で
町を眺めるのが趣味なのだとか。
趣きある双眼鏡は、
年代物のそれとすぐ分かる。
"物"好きな僕は、覗かせてもらい、
低めの倍率ではあるが、
異常にシャープネスの高い、
古いドイツレンズの味わいを存分に楽しんだ。
こうした出会い自体がこの建物の魅力なのだとつくづく思う。
